行き違いの想いの果てに <思い出を繋ぐ物> 僕は中学時代、気になる子が居た。 名前は『越前 リョーマ』 生意気で小悪魔的な存在だったけど、皆に好かれる魅力を持っていた。 僕は彼と付き合う事が出来たけど、まだ幼かった僕達は本当の愛が分からぬまま別れてしまった…。 ―今君は何をしているのだろう― ―今もう一度過去をやり直せるのなら、君と別れる前に戻りたい― ―今なら絶対に、君を失う事なんてしないのに…― 「不二、この前の合コンで知りあった子はどうした〜?」 「…英二。えっと、ユミちゃんだっけ?駄目だな…。断っちゃった」 「え〜…。不二ってモテるのに何で女の子と付き合わないの?」 「…昔の恋人が忘れられなくってね。どうも本気になれないんだ…」 「それって…おチビの事だよね…」 「うん。女々しいよね、僕が振ったのにさぁ…いまだに忘れられないんだ」 「不二…俺、不二がどれだけ後悔したのか知ってるからさ…色々、協力するよ」 「…ありがと、英二。」 英二とは、大学が違った今でもよく会う友達でいる。 僕達は高校でテニスを辞め、平凡な学生生活を送っている。 越前君が聞いたら呆れるかな? でも僕らは…手塚や越前ほどの才能が無かったから、仕方が無い選択だったんだ。 別に後悔とかは無いけど…越前と付き合ったままならテニスは辞めなかったと思うな。 彼の興味対象は…『強い人』だから。 「あ、ねぇ不二…。おチビがテレビに映ってるよ。 …凄いね、世界プロ相手に驚異の40連勝!親父さんの37連勝を越えたんだってよ?」 「うん、頑張ってるよね…」 「やっぱり見るのは辛い…?」 「少しね、昔の面影がまだ残ってるから…」 『おめでとうございます、越前選手!凄いですねー、18歳という若さで世界相手に40連勝なんて!!』 『どうも…。たいした事じゃないっすよ。まだまだ上を目指すんで』 『そうですか、頼もしいですね。今の気持ちを伝えるなら誰に伝えますか?』 『…そっすね、昔世話になった部活の先輩達ですね。全然連絡とってないし…手塚さんとは選手としてよく会うけど』 『まぁ?!手塚選手と昔からの知り合いだという噂は本当だったんですね〜?昔はどういう方でした?』 『昔から…お堅い人っすよ。真面目で、怒りやすくて…。 でも本当に強かった。俺が世界まで来れたのは、ハッキリ言って手塚さんのおかげっすね』 プツッ 「不二?大丈夫…?」 「大丈夫だよ。ただ…手塚の話をしてる越前を見たくなかっただけ。英二、悪いんだけど、さ…一人にしてくれない?」 「あぁ、うん…。ムリすんなよ?じゃ、な」 パタン…… 「ヒック…ヒク…」 君は海の向こうに居る。 僕の手の届かない場所に。 今さらかもしれないけれど、凄く会いたい。 会って、今の気持ちを伝えたい…。 なんて勝手なエゴの塊だろう…、嫌になるなぁ…。 ――僕の気持ちが君の元まで、届けばいいのに―― 「僕は、弱い…。越前君、君と一緒に居た時の僕は、人として余裕があったみたいだよ…?」 僕は最近、サボテンが飾ってあるテーブルの横で眠る。 このサボテンは、君との記憶が唯一詰まっているもの。 君とお揃いで買って、大事に育てたサボテン。 名前は―「リョーマ」 可愛い可愛い僕のサボテン。 そして今日も、僕はリョーマの隣で眠る。 安らぎと、過去を求めながら夢を彷徨うんだ…。 ――君に…逢いたい…―― |